山本 達也 教授
地球市民学科
「次の時代」を学問的視点から構想します
技術の社会的普及が、その社会や政治をどう変化させるのかという視点からの研究をしています。特に情報通信技術とエネルギー関連技術から次世代社会を考えます。教員インタビュー
Q1
学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。
昔から、移動すること、新しい場所を訪れることが好きでした。小学校の頃は電車で、中学時代は自転車で、高校に入るとバイクでと、移動手段は変わりましたが、時間を見つけては友人たちと旅を繰り返していました。大学に入ると、新たに「国際線」が移動手段として加わりました。当時は「格安航空券」の入手が簡単になった時期でもあり、安いチケットを見つけては海外へ出かけて行きました。当時「はまって」いたのは、何といってもアメリカ。カナダやメキシコに「陸路」で国境を越えるという感覚も新鮮でした。
どれも学生時代のいい思い出ですが、自分にとって特別な街はニューヨークでした。マンハッタンが放つ、ある種独特の「エネルギー」の虜だったのだと思います。結局、大学4年間を振り返ってみると、1年のうち4ヶ月(夏休みの2ヶ月と春休みの2ヶ月)は日本にいませんでしたね。
そのかわり、学期期間中は授業やゼミ活動に打ち込みました。当時通っていた大学が24時間キャンパスだったこともあり、ゼミでの発表前は何日も大学に泊まり込んでグループワークをやっていました。授業の合間には、友人たちとクルマで湘南の海に繰り出したり。ある意味「正しい」学生生活を満喫していたと思います。
Q2
先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。
研究上の大きな枠組みである「国際関係論」という学問に出会ったのは、大学2年生の秋学期でした。同名の授業を履修した時に、自分の興味関心に一番近い学問はこれだ、と直感的に思いました。特に関心があったのは、インターネットやコンピュータが世界をどのように変えようとしているのかという問題でした。文理融合型の大学で学生生活を送ったこともあり、コンピュータ科学の先生方からも多くの影響を受けていたのです。
そんなことを考えているうちに、9.11 が起きました。世界貿易センタービルが消え、自分の好きだったニューヨークの景色は二度と見ることができないという事実にショックを受けると共に、世界が大きく変わっているという実感もありました。
世界を理解するには、イスラーム圏を無視するわけにはいけないという状況でした。「やるなら今しかない」と、結婚も含め様々な準備を終え、9.11 の半年後には、シリアのアレッポ大学を拠点とした研究生活を始めていました。
結局、シリアには約3年滞在することになりました。その間、シリア、レバノン、ヨルダン、エジプト、アラブ首長国連邦を中心にフィールドワークを行いつつ、アラブ諸国のインターネット?コントロール政策の比較研究を行い、この成果が博士論文となりました。
Q3
研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。
小学校時代から続いている「旅好き」の理由も共通しているのだと思いますが、結局のところ自分は、「常識」が常識でなくなる時や、自分の知らない「違う常識」に出会うことが面白くて仕方がないのだと思います。
私の研究上の関心は、「技術」が世界をどう変えるのかという点にあります。技術は社会を変える力を持っています。どんな技術も社会に何らかの影響を与えま すが、いくつかの技術は「創造的破壊」を伴いながら社会を劇的に変えるだけの力を持っています。これまでの「常識」が簡単にひっくり返ることもあるのです。
中でも私が注目しているのは、「情報通信技術」と「エネルギー関連技術」です。私たちを取り巻く地球社会は、今、文明論的大転換点を迎えつ つあるといっても過言ではないと思いますが、なぜこうなっているのか、これからどうなっていくのか、どうしていくべきなのか、という「難問」を解くカギ が、これら2つの技術から地球社会を眺めることで見えてくるのではないかと考えています。
私の研究上の関心は、「技術」が世界をどう変えるのかという点にあります。技術は社会を変える力を持っています。どんな技術も社会に何らかの影響を与えま すが、いくつかの技術は「創造的破壊」を伴いながら社会を劇的に変えるだけの力を持っています。これまでの「常識」が簡単にひっくり返ることもあるのです。
中でも私が注目しているのは、「情報通信技術」と「エネルギー関連技術」です。私たちを取り巻く地球社会は、今、文明論的大転換点を迎えつ つあるといっても過言ではないと思いますが、なぜこうなっているのか、これからどうなっていくのか、どうしていくべきなのか、という「難問」を解くカギ が、これら2つの技術から地球社会を眺めることで見えてくるのではないかと考えています。
Q4
学生へのメッセージをお願いいたします。
比較的自由な時間がたくさんある学生時代の過ごし方の提案として、「移動のススメ」をしてみたいと思います。移動は、面倒だし、お金もかかるし、疲れるかもしれませんが、「どこか違う常識」を体感することは、想像すらしなかったような五感の使い方を可能とし、世の中をこれまでと違った視点から理解する手助けをしてくれます。本や人からの話も大切ですが、「現場」に行かなくては決してもらうことのできない「ご褒美」は、確実にあると思います。
最近では、「Airbnb」などのサービスを使えば、手軽に海外で「疑似居住体験」もできるようになりました。これも情報通信技術の発展が可能にした、「新しい旅の形」でしょう。一カ所だけではなく、是非「移動」を繰り返しながら、いろいろな「現場」を体感してきて下さい。
気がつくと「この人の話が聞きたい」「この人と話がしたい」と思われるような、魅力的な人間になっていると思いますよ。
教員紹介
氏名 | 山本 達也 |
フリガナ | ヤマモト タツヤ |
職種 | 教授 |
所属 | 地球市民学科 |
取得学位 | 博士(政策?メディア) |
学位取得大学 | 慶應義塾大学 |
専門分野 | 国際関係論?公共政策論?情報社会論 |
研究テーマ | 技術がいかにして政治や社会を変革するのかという視点に着目した研究を行っている。特に、「創造的破壊」をもたらす技術として、インターネットに代表される新しい情報通信技術とエネルギー関連技術との交錯領域に強い関心を持っている。エネルギー環境の変革期に求められる秩序形成や意思決定のあり方を探り、「次の時代」の政治?経済?社会システムを考えてみたい。 |
所属学会(役職) 及び受賞歴 | 日本国際政治学会
日本政治学会 日本比較政治学会 日本公共政策学会 グローバル?ガバナンス学会 情報社会学会 International Studies Association |
主要業績 | 【著書】
?『アラブ諸国の情報統制:インターネット?コントロールの政治学』(単著)慶應義塾大学出版会 2008年 ?『政策過程分析の最前線』(共著)慶應義塾大学出版会 2008年 ?『ネットの高い壁:新たな国境紛争と文化衝突』(共著)NTT出版 2009年 ?『政治の見方』(共編著)八千代出版 2010年 ?『革命と騒乱のエジプト:ソーシャルメディアとピーク?オイルの政治学』(単著)慶應義塾大学出版会 2014年 ? 『日本の政策課題』(共著)八千代出版 2016年 ?『日本政治とカウンターデモクラシー』(共著)勁草書房 2017年 ?『暮らしと世界のリデザイン:成長の限界とその先の未来』(単著)花伝社 2017年 ?『多様化する社会と多元化する知:「当たり前」を疑うことで見える世界』(共編著) ナカニシヤ出版 2017年 【学術論文】 ?「ソーシャルメディアと『アラブの春』:『動員革命』と『透明性革命』」『アステイオン』第77巻、52-66頁、2012年 ?「エネルギー環境の構造的変化と民主主義に関する一考察」『清泉女子大学人文科学研究所紀要』第37号、29-45頁、2016年 ?「エネルギー環境の構造的変化と国際および国内秩序の変容:国際社会理解への地球物理学的?資源工学的アプローチからの示唆」『中東情勢?新地域秩序:安全保障政策のリアリティ?チェック』日本国際問題研究所、41-54頁、2016年 ?「インターネット時代における情報と国際政治をめぐる諸課題:国家安全保障と民主主義的価値とをめぐるジレンマ」『清泉女子大学キリスト教文化研究所年報』第24巻、229?249頁、2016年 ?「ソーシャルメディアがカウンター?デモクラシーに与える影響:情報通信技術と民主主義をめぐる一考察」『清泉女子大学紀要』第64号、91-104頁、2017年 ?「中東におけるインターネット?コントロールをめぐる状況の変化と今後の展望」『中東研究』第535号、14-29頁、2019年 ?「EROI指標が示す国際的なエネルギー危機と再生可能エネルギーをめぐる公共政策への示唆」『清泉女子大学紀要』第68号、71-92頁、2021年 |
社会活動、 文化活動等 | ?松本市基本構想2030市民会議座長(兼都市計画部会長)
?松本シンカ推進会議座長(長野県松本市) ?日本学術会議エネルギーガバナンス小委員会委員 ?日本工学アカデミー自然エネルギーのガバナンス検討部会委員 ?品川区環境計画等改訂協議会 副会長 |
個人ページ (外部サイト) | https://www.tatsuyayamamoto.com |