3分野を学ぶ意義
なぜ大学で「日本語?日本文学」を学ぶのか
私たちは、「日本語、日本近代文学および古典文学と向き合うことで、社会に出てからも役に立つ調査?分析手法、深い考察力を身につけてほしい」と考えています。
なぜ3分野(日本語学?日本近代文学?日本古典文学)を学ぶのか
本学科では、1?2年次に3分野すべての基礎を学ぶカリキュラムを設置しています。それぞれの分野は連関して、社会?文化を知るための重要な知識の土台を作ります。3分野を学ぶことで広い視野を得ることができ、物事を多角的に捉えることができるようになります。
■3分野の特徴を知ろう
日本語学ってどんな学問?
日本語学は、日本語を一つの「言語」として調査?観察し、規則性を見つけ出す学問と言われています。高校までの国語ではあまり扱われることのない学問分野です。
日本語学の研究対象は、学校やマスコミの「正しい日本語」や、文学作品の「美しい日本語」だけではありません。方言(地域によって異なる日本語)、古語(時代によって異なる日本語)、若者ことば(世代によって異なる日本語)、さらには誤用の日本語まで、あらゆる日本語が研究対象です。たとえば、時代劇に出てくる「ござる」は高校の古文では習いませんが、いつから使われていたのでしょうか? 「くるくる」と「ぐるぐる」、「きらきら」と「ぎらぎら」は濁点の有無にどんな規則性があるのでしょうか? このような日本語に関する身近な疑問を出発点にして、文献やデータベースを調査し分析していきます。
つまり、日本語学とは、データを科学(サイエンス)する上で、AIにはできない最も人間的で創造的な「問い」を日本語について立てる学問でもあるのです。
「日本語学演習2」(3年次選択必修科目)
近年起きたことばの変化を調査する授業です。新聞記事データベースを利用して、自分で問いや仮説を立ててことばを検索し、単語や品詞の認定や意味?用法を分析する訓練を行います。たとえば、「アベック」と「カップル」。「アベック」が死語と言われていますが、いつ頃から両者の使用量が逆転したのか、使い方はどう変わったのか、「アベック」は本当に死語なのかなどを調査していきます。このように、この授業では日常の中での日本語に関する直感をデータに基づいて証明しています。近代文学はどのように読むの?
小説は、今とは違う場所?違う時代を見るために開かれた、窓のようなものです。それらは作家たちの意図をも超え、その時代?社会の精神を深く刻み込んでいます。谷崎潤一郎『痴人の愛』のナオミはカフェーの女給ですが、彼女たちは一体どんな暮らしをしていたのでしょうか。同時代のプロレタリア作家?佐多稲子も女給を小説に描いています。女性作家がとらえた女給像と比較すると、谷崎には見えていなかった昭和期のリアルな女性たちの生活がみえてきます。
戦争や植民地などのとっつきにくそうなトピックも、日本租界に暮らす日本人少女の目で戦時下上海を描いた林京子の作品、戦後アメリカ占領下の沖縄における理不尽な生活を高校生の娘を持つ沖縄人の父親の目から描いた大城立裕の作品などを読むと、とたんに鮮やかな時代状況が浮かび上がってきます。
大学の近代文学研究では、本文読解はもちろん、作家を知り、資料を読み、同時代の新聞記事なども調べたりすることで、改めて作品に向き合い、書かれた時代と場所の思考?時代精神の中に飛び込みます。作品だけを読むのではわからない、同時代のものの見方?世界観に触れる体験そのものが、文学研究の面白さです。
「日本近代文学入門演習」(1年次必修科目)
作家と作品の読み方の関連性、作品相互の影響関係と読者論?二次創作という現象、本文異同や草稿研究など、文学研究に必要な手法を、ワークショップ形式も用いて実践的に学びます。グループワークでは、小説の冒頭部分だけを読み、作者?時代?あとに続く作品世界を想像するなどして読解力を身につけたり、芥川龍之介「藪の中」をあえて一部分だけ読み、語りの形式の重要性を実感したりします。なぜ古典文学を学ぶの?
この問いに対して、1年次必修科目の「日本古典文学入門演習」を受講している学生からは、次のような回答が寄せられています。- 中高の頃に作った土台をもとに大学で改めて古典を学ぶことで、新しく得た視点から物事を考える力を養えるから
- 過去の人々の考え方や歴史を学ぶことで現在との違いを比較し、これからに活かしていくことが出来るから
- 日本のことをより深く知ることができるので、海外の人と交流を持ったときに自国について自信を持って紹介することができるから
そもそも、大学での古典の学びは、文法の学習や現代語訳にとどまりません。
- かぐや姫が発見されるのはなぜ竹の中という設定?
- 悲劇のヒーローとしての源義経像はどのようにして成り立った?
- 文学における「鬼」は時代によって描かれ方が異なる?
「日本古典文学入門演習」(1年次必修科目)
高校古典の復習をしながら、文法や和歌の修辞についての理解を深め、古典文学をより深く味わえるような知識を蓄えていきます。高校では触れることのなかった古典作品も紹介し、文学に描かれた多様な「人間」の姿を学びます。古の日本の文化や思想を知ることが、今の私たちの生き方を考えることに繋がります。オンライン授業「日本古典文学入門演習」動画(YouTube)
→なぜ「けり」に詠嘆の意味があるのか?(4:48)
調査?分析手法、考察力の身につけ方
2年次の「基礎演習」、3年次の「演習」では、自分で調べ、考え、まとめ、発表するというステップを経験してもらいます。それは、卒業論文に向けての段階的な学びであると同時に、論理的な思考力やプレゼンテーション力という、これからの人生に役立つスキルを高めるための訓練でもあります。
取得できる資格?取得した人数
2022年3月卒業者(単位:人)
中学校教諭一種(国語) | 12 | 高等学校教諭一種(国語) | 12 |
中学校教諭一種(宗教)* | 0 | 高等学校教諭一種(宗教)* | 0 |
司書教諭 | 3 | 司書 | 17 |
学校司書 | 2 | 学芸員 | 3 |
日本語教員 | 6 |
卒業後の進路
日本語で書かれた文献を正しく理解し、わかりやすい日本語で相手に伝えること。日本語日本文学科の学びで身につけた力は、社会のあらゆる仕事と親和性があり、卒業後もあなたの人生を支える基盤となります。